本日のウイスキーはあれだけ買っちゃダメな価格帯と分かって掴んだ「ジョン・バー」というブレンデッドウイスキー。
久しぶりにやまやの前を通るので、わざわざ車を止めて寄ったものの買いたいと思えるウイスキーが見当たらず、久しぶりにドイツのピルスナービールでも飲もうかと思ったものの「空き缶捨てるのうざい」と思って歩いているとウイスキーエリアで「2本で2,000円」の文字に釣られました。
見た瞬間に「レジェンダリースコットの兄貴か?」と思うぐらいフォルムとラベルのチープさがそっくりですが「袋は要りますか?」と尋ねられ「要りません」といって持ち帰り。まぁレジェンダリースコットよりは色味が深くおいしそうには見えますが。
(それにしても、やってもーた)
ちなみに2本2000円カテゴリーを見渡しても飲みたいものはなく、ジョン・バーを2本買う勇気もなく、過去に飲んでいない消去法で掴んだのはハイニッカ。これは次回メモします。
日本ではあまり馴染みがない理由は後に触れますが、おそらく本国イギリスではそこそこ知名度があるはずですし、ジョン・バーを扱うグループ企業は世界屈指の会社ですからそれなりのファンがいらっしゃるものと思います。
ボトル裏面の説明書きによると「名前はグレートウイスキーマンに由来し、スペサイドとハイランドをブレンドし、スムースでエレガント云々」とあります。
よくわからないのでサイトを読むと最低3種類はブレンドされてるみたい…(雑に斜め読み
John Barr Reserve Blend unites Highland malt and grain whiskies, for structure and richness, and Speyside varieties, for a mellow finish.
Each component whisky is carefully selected and expertly blended by a 3rd generation master blender, whose time-honored approach to whisky making delivers a reserve blend with a distinctive, rewarding taste profile.
John Barr Reserve Blend is characterized by rich aromas of chocolate, baked sweet apple, and freshly baked bread, followed by notes of ripe apricot, gingerbread, and hazelnuts on the palate, and a lingering maple finish.
てか、後半の単語が気になりますな。
「チョコレート、焼いた甘いリンゴ、焼きたてのパンのアロマ、熟したアプリコット、ジンジャーブレッド、ヘーゼルナッツ、メープル」ってさ、ヨダレが落ちそうな単語ばかり並んでます。
(ほんまかいな)
しかも1,000円!?で。
原料代、(ボトル)容器代、ラベル代、保管料、加工賃、梱包材料費、国内外のトラック運賃、船賃、酒税、関税、製造元と販売会社の適正利益…原価ナンボなん?これ、スコッチですよ?イギリスの蒸溜所で働かれる人々は本当にイギリス人ですか?
(しかも世界的インフレの真っ最中)
酒屋ビジネスに販売手数料(リベート?コミッション?キックバック?)なる仕組みが存在するのか存じませんが、それにしても国内消費な価格設定ですから「別の兄弟商品を売ってくれたら、コイツはタダでで提供します」みたいな握りが存在してないと不都合な真実でしょ。
だってやまやも利益がゼロではダメなんだし。
(真面目に作っていたとしたらお買い得ではあるが…)
これを手にした理由は他にも2つあります。
1つ目はその場でスマホ検索したらアメリカのリカーサイトに「40ドル」と書かれていたこと。
2つ目は棚に1本だけ残っていたこと。(写真撮り忘れた)ジョン・バーは赤ラベルと黒ラベルの2種類あって、赤ラベルは在庫満タンなのに黒ラベルはガラガラ。最後の1本。
(1本だけってさ、ちょっと気になるでしょ?こっちがおいしいの?って)
しかも飲んだことがないウイスキーが1本だけ、かつ1,000円となればダメと分かっていても掴むでしょ?
(やってもーた)
ジョン・バーの感想
ユーチューブを見るといくつかの日本語動画があり「ジョニーウォーカーの姉妹ウイスキー」とか出てきて、それホンマなん?と思いながら再生すると、ある方は私と同じことをした人でした。
つまり「やまやで2本で2,000円」トーク動画。
私は「ジョニーウォーカー = スモーキー系」というイメージを持っているのでジョニーウォーカーシリーズは好んで掴まないブランド。つまりジョン・バーがジョニーウォーカーの姉妹ウイスキーと知っていたら買わなかったと思います。
(ピーティーすぎる煙い系が大嫌いで飲みやすい初心者向きが好きなのだ)
一応いろいろと調べてみました。
情報が山ほどありすぎてまとめられない量ですが簡潔な結論は昨今の原酒不足やウイスキー人気にあやかって一儲けしたい金持ちが廃蒸溜所やブランドを再構築した商品です。
とりあえずメモしますが誤訳多数と思われますので「まぁそんな感じなのね」程度にご参考あれ。
ジョン・バー社の親会社ホワイティ&マッケイ(Whyte & Mackay)社は1882年グラスゴー生まれで元はウィスキー保税倉庫会社だったそうです。この会社名を冠したウイスキーもおいしいことで知られていますが本日は割愛。
その会社の傘下にあるジョン・バー社。その社名を冠した主人公ジョン・バーは1978年に発売されたウイスキーですが、元々ジョニーウォーカーチームによって作られたのが売りです。つまりジョニーウォーカー寄りの味ということなんでしょうね。
(ジョニーウォーカーの味を思い出せないので比較できないけど)
今は各種アルコール飲料を製造する大きな会社なので日本だとサントリーみたないことです。以前ご紹介したタムナヴーリンも同グループです。
ジョン・バー社は苦労人なウイスキー会社。
ドナドナドナァドォナァ〜♪なウイスキー人生です。
- 1971年にSUITSグループに買収
- 1981年にSUITSがLonrhoに買収
- 1988年にブランドがBrent Walkerに売却
- 1990年にAmerican Brandsに売却
- 1997年にFortune Brandsに改名
- 2001年にFortune Brandsの経営陣や銀行団の手へ
- 2007年にインドのUnited Spirits Limitedに売却
- 2013年United Spirits Limitedがディアジオ傘下へ
- 2014年ディアジオからEmperador Inc.へ売却
なんじゃこりゃという歴史。最後のEmperador Inc. というのはフィリピン華僑の会社で「Alliance Global Group holding company(略してAGI)」というコングロマリット財閥です。
AGIはゲンティン香港と組んでフィリピンでリゾートワールドというホテルを運営し、カジノで一儲けしている会社でもあります。もはやウイスキーとはまったく関係ない域の話になってしまいましたが、ひとつ確かな揺るぎないブランドを構築すると、その名前と歴史だけで商売できるという、ちょっと京都の老舗ビジネスにも似たるお話。
ウイスキーへ話を戻し、本日のネタ「JOHN BARR」は2017年に「John Barr Reserve(黒ラベル)、John Barr Finest(赤ラベル)」の2種類に再構築されたそうです。
ここまでで十分ややこしいファミリーヒストリー。
でね、ジョニーウォーカーの姉妹品と言われる理由ですが、先に触れたとおり元々ジョニーウォーカーチームが作ったことでも知られておりますが、1970年台にディアジオグループの前身DCL(ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド)が欧州委員会から商品の二重価格に対処するように言われ、海外販売代理店保護を優先した結果として英国市場からジョニ赤やヘイグを撤退させました。
ジョニ赤やヘイグ撤退による売上の凹みをリカバーするためにボトルフォルムもそっくりに再現したのがジョン・バーでGeorge Cowie & Sons(ジョージコーウィー&サンズ)社にライセンス販売させたのですが、売上の凹みを回収できるほどの人気は出なかったそうです。
後にDCLをギネス社が買収するのですが、今度は競争法によりDCLがブランドを手放さざるを得なくなりInvergordon Distillers(インバーゴードン蒸溜所)が買収し、1993年にホワイティ&マッケイ(Whyte & Mackay)が2年かけて敵対的買収を成功させて現在に至るらしいです。
いまインバーゴードン蒸溜所はホワイティ&マッケイ社の傘下ですが、ホワイティ&マッケイ社はEmperador Distillers(エンペラダー蒸溜所)の傘下で、先に触れたAGIを構成する中心的1社がEmperador Distillersということになるそうです。
(Emperador Distillersはブランデーで有名らしいですがまったく存じません)
つまりホワイティ&マッケイ社のサイトからジョン・バーを見るとイギリスの老舗ウイスキーの印象ですが、実態はフィリピン企業の一アルコール部門のなかの(たぶん)最低価格の撒き餌のような大衆向けウイスキーだと思います。
ということで、長々と書きましたがこの商品「ジョン・バー」は、約半世紀前に二重価格や競争法などによる企業競争力低下を補うためにピンチヒッターとして生まれたものの、製造所、所有権、販売権、所有者移転などの問題が相次ぎ手足がバラバラの状態であったものを2017年に再生して世に送り出されたウイスキーです。
まぁ雑に言えば京都の例えじゃないですが「お金で歴史を買う」ということです。それを知らずに「1,000円なら飲んでみるか」といって買いました。
ちょっとした国際金融資本のお勉強になってしまいました。
(前置き長っ)
基本的に味音痴ですが喉越しが快いものを選ぶ傾向があるジジイの率直な感想…
- 初心者おすすめ度 : ★★★☆☆
- アルコール感 : 殆ど気になりません
- 喉越し : ストレートはねっとり、ロックはなめらか、余韻は短い
- 香り : チョコレート的はっきりとした甘さ
- リピートしたい度 : 低予算の縛りがあれば確実にリピート間違いなし
赤ラベルを飲んだことがないので比較できませんが、この黒ラベル(リザーブブレンド)はアタリと思われます。(強運?) やはりやまやの棚に1本しか残っていなかった理由は赤より黒の方が飲みやすいのでは?と思います。
気になるような、苦味、酸味、スモーキーさなどの癖が無いのでゴクゴクいけます。
個人的には「酒7:水3」ぐらいの割合がアルコールも抑えられ、かつ甘味も冴えておいしく飲めたように思います。どうも加水すると香りが一気に落ちる印象で、(まぁ好みではありますが)「酒7:水3」や「酒8:水2」ぐらいが鼻と口に抜ける甘い香りがおいしさを感じる限界で、トワイスアップまでいくと楽しみが半減した印象。
しかしこれが日本までの運賃込で1,000円ですからね。たぶん3,000円と言われても全員が騙されるほどリーズナブル。
んー、もしかすると、これはお買い得かもしれません。
(実はあまりの値段の安さとねっとりした甘さに人工甘味料を疑ったりしておるが…)
たとえば少し前に終売した富士山麓も1,000円程度で買えました。あれは度数が高いせいでアルコール臭が初心者にはキツい。それと比べるとジョン・バーは遥かに口当たりがよく飲みやすい。味に深さはないですが、なにせ1,000円ですから。
(箱買いもアリなパターンかも)
いまヨーロッパはウクライナ問題でエネルギー調達でもめており、イギリスもそのひとつ。
「食べることを優先するか、それとも温まることを優先するか」というぐらい光熱費が暴騰しておりまして、そんな折ですから常識的に考えると「酒なんて飲んでる場合か」と考えますと「売れる国に買ってもらう」ということで日本に来たものの1,000円の味ではないと思いますので、案外ヒットするんじゃないかと思います。
(まぁ酒でも飲んで温まるという考え方もできはするけど…)
ちなみに、先日久しぶりにイオンモールというドデカいスーパーに行きました。そこでもホワイティ&マッケイ商品群の日本人攻撃棚を確認。完全にやまやと同じ展開。
これ、背後で商社マンが頑張ってるっぽい。
いま日本は世界のなかで一人負け状態。
この棚から感じることは、日本人は安価ウイスキー沼にしかハマれないしハマったら抜け出せない人が増え、日本企業もグローバル化して国内低価格帯商品では利益積み増しできないので、おいしい商品を儲けられる海外へ売りたがる構造に見えます。3-4,000円の価格帯商品を海外から引っ張ってきた感じですかね。
どんなに原酒がナイナイと言っても経済力があれば日本人だってたまには美味しいウイスキーぐらい買おうと思うわけで、このまま国が衰退するのか「最近そーいえば山崎とか白州どこでも見るよね」と盛り返してくるか。
この場に佇んでそんなことを思っていました。
(結局なにも買わず撤退)
ということでお盆に家族サービスで散財して財布はからっ欠というパパ様でもノーブレーキでお買い求めいただけ、そこそこおいしいジョン・バーのメモでした。ごちそうさまでした。
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